甲南女子大学医療栄養学部の協定病院として実習生の受け入れも予定している医療現場から
管理栄養士を中心とするチーム医療の最前線をご紹介します。

生涯にわたり食べることを楽しみ続けてもらえるように

食事は「一番の楽しみ」だと
おっしゃる方も多い貴重な時間

京都市南区にあるビハーラ十条は、2階から4階までのフロアに約100名の方が暮らす特別養護老人ホームです。1フロアに10の個室からなるユニットが2つ、8の個室からなるユニットが2つあり、それぞれ「西町」「南町」「北町」「東町」といった呼ばれ方をされています。さらに2階は「吉祥院」、3階は「上鳥羽」、4階は「朱雀」と名づけられていて、入居者の方は「上鳥羽西町にお住まいの○○さん」といったイメージ。施設全体が一つの町のようになっていて、とても和やかな雰囲気です。食事の時間になると、ほとんどの方が各ユニットの中央にあるリビングに出てこられ、和気あいあいと召し上がります。食事は一番の楽しみだとおっしゃる方も多い貴重な時間。そのカギを握るのが、管理栄養士です。

一人ひとりに合わせた食事を用意し
硬さなどの状態も毎食チェック

ビハーラ十条では、給食業者と協力しながら、普通食だけでなく、歯ぐきでつぶせる「軟菜食」や舌でつぶせる「ムース食」なども用意しています。調理室があるのは1階です。皆さん一人ひとりに合わせた給食を管理しているのは、管理栄養士の馬場喜保子さん。食事を提供する前、硬さなどを確認する「検食」も大切な仕事です。「白米やお粥のやわらかさも欠かさず確認しています。嚥下(えんげ=飲み下すこと)の状態が落ちてきている方が多いので、舌でつぶせるかどうかも重要なチェックポイントです。できるだけおいしく楽しく召し上がっていただけるよう、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供できるよう配慮。目にもおいしく映るよう、色合いやバランスなど盛りつけにも心を配っています。」(馬場さん)

心も会話も弾むおいしいごはんで
栄養を管理し健康をサポート

入所だけでなくショートステイの方もいらっしゃるので、毎食それぞれ準備が大変。糖質制限や塩分制限、アレルギー食材のある方への注意も必要です。さらには食事そのものだけでなく栄養状態の管理も、管理栄養士の重要な役割。食事の時間には各ユニットを回り、低栄養状態など高リスクの方を中心にモニタリングを行います。食後は、主食、主菜、副菜など、召し上がれていないものを確認し、場合によっては栄養補助食品でサポート。コミュニケーションを大切に、お一人ずつのご要望も重視します。「必要な栄養管理だけではなく、少しでもおいしく喜んで食べてもらうことを大切にしています。おいしいごはんは、心も会話も弾ませてくれるもの。幼い頃に食べたものや思い出の一食など、味の記憶って人生の最期まで残るので、食事の話題ってふくらむんですよね。そういった会話も大切にしながら、皆さんの健康をサポートしています。」(馬場さん)

施設の食事で栄養状態が改善し
元気になる利用者も多数

食事量を把握するとともに体重なども測定し、利用者全員の栄養状態を評価。医師や看護師、歯科医師や歯科衛生士、理学療法士や言語聴覚士などと、パソコン上のデータや会議を通じて情報を共有しながら、健康維持に努めます。「食が進まない場合も、口腔内の問題や、姿勢による弊害、呼吸の状態など、さまざまな要因が考えられます。解決に向けては多職種との連携が不可欠で、医療の知識も大切です。口から食べ唾液を出すことは、免疫力を高めることにもつながり、舌で味を感じると脳の刺激にもなります。入所されてから栄養状態が改善された方も多く、食事を通じて元気になってくださると嬉しくなりますね。食べる力は生きる力のみなもと。できる限り食べることを楽しみ続けてもらえるよう、これからも精いっぱい支援していきます。」(馬場さん)